議員提案条例と4項再議
2010年07月30日
2010.07.30
7月28日の河村市長の申入れにより、9月定例会では、おそらく名古屋市政では始めてとなる市長の4項再議による審議が行われる見通しです。
現在のところ、河村市長が地方自治法176条第4項の再議に付すとしているのは、先の6月定例会で市議会が修正し可決した「中期戦略ビジョン」と民主党市議団からの議員提案による「名古屋市公開事業審査の実施に関する条例」(公開事業審査条例又は、事業仕分け条例)の2件となるようですが、特に「公開事業審査条例」については、先般、河村市長から市議会正副議長への申入れられた内容を見る限りでは、河村市長の市長と議会との権限に関わる考えと公開事業審査に議会が関与することの問題点が挙げられているだけで、条例のどの部分が4項再議理由として、議会権限を超えているのかについては、具体的な指摘はされていません。
今後、中期戦略ビジョン、と公開事業審査条例が4項再議に付された場合、その審議は、政策的内容よりもその事項が法令や市の関係条例等と照らした是非が先ず問われることとなり、私は、所管の総務環境委員長として、昨日の委員会終了後に正副委員長会を開催し、担当局長はじめ、関係局の担当者に中期戦略ビジョンと公開事業審査条例が4項再議となる場合の根拠とその資料等を明らかにするよう具体的な要望を行いました。
- 正副議長への申入れで示された公開事業審査条例の4項再議理由
- 「名古屋市公開事業審査の実施に関する条例」は議会の権限を超えるものと判断した。
- 公開事業審査は、地方自治法第148条に謳われた、長の管理執行権に大きく関わるもので市長がその責任において制定すべき。
- 議長の推薦した議員を審査人に加える規定では、行政は声の大きな人に偏ることなく、少数意見や声なき声にも最大限配慮すべきで、政治的中立性が要求されない議員が審査人に加わって、公平・公正な事業審査を行えるのか。
- 二元代表制を標榜する地方自治制度で、本来議員は、自らの信念に基づき独立して意思を表明すべき。
- 議長の推薦に基づき特定議員が、議会代表として審査人に加わることに、大変な違和感を感じる。
- 議員の審査人に懸念を覚えた時、市長は議員を審査人から外すことは可能なのか。
- 私(市長)は、無作為抽出の市民を中心に事業仕分けを行うべきと考え、実施に向けて検討していたが、手法も制約を受けるのではないか。
- 「対象事業を議会が選定する」、「市長が審査対象事業を定めようとするとき、議会の意見を聴取する」といった規定は、私(市長)が思い描く事業審査を実施することができるのか。
- 市長の管理執行権に関わる条例は、本来議会が制定すべきではなく、市長の専管事項。
- 市議会が議決し不交付となっている「名古屋市公開事業審の実施に関する条例」
名古屋市公開事業審査の実施に関する条例
(目的)
第 1 条 この条例は、本市の事務執行の透明性と有効性の確保を図るとともに、市政に民意を反映するため、事業審査の実施について必要な事項を定めることを目的とする。
(定義)
第 2 条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 事務事業 施策を実施するための個々の方策その他これに類するものをいう。
(2) 事業審査 事務事業について、有効性、効率性その他必要な視点から点検、検証を行い、その必要性の有無及び実施主体のあり方等について審査を行うことをいう。
(3) 審査人 事業審査において、前号の審査を行う者をいう。
(事業審査の実施)
第 3 条 市長は、事業審査の実施に当たっては、事業審査の対象とする事務事業、審査人、審査を行う時期その他必要な事項を定めるものとする。
2 前項の規定により、市長が事業審査の対象とする事務事業を定めようとするときは、議会の意見を聴取するものとする。
3 市長は、議会が事業審査の対象とする事務事業を選定し、事業審査の実施を求めたときは、その趣旨を尊重し、事業審査を実施するものとする。
4 審査人は、学識経験者、議長の推薦による議会の議員及び市民から公募等した者のうちから、事業審査の実施の都度、市長が委嘱する。
5 事業審査は、公開の場で実施するものとする。
6 事務事業を実施している市長その他の執行機関は、事業審査に必要な資料を作成し、審査人に説明するとともに、市民に公表しなければならない。
(事業審査の結果の公表と活用)
第 4 条 市長は、事業審査を実施した場合、速やかに結果をとりまとめ、議会に報告するとともに、市民に公表するものとする。
2 市長は、事業審査の結果を施策の見直し等に活用するとともに、その反映状況を公表するものとする。
(委任)
第 5 条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。
- 河村市長の4項再議を報じた新聞各紙
※それぞれの新聞記事はクリックすると拡大します。
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今回の河村市長の条例不交付や4項再議付議では、その法的根拠が頻繁に議論されていますが、市長が議会の議決内容に意義がある場合に行使される事実上の拒否権発動となる地方自治法第176条例第1項の再議とは異なり、今回の4項再議では、市議会の議決が違法或いは、議会の権限を超えている場合にのみ対象となるもので、河村市長から4項再議の明確な根拠が具体的に示されない限り、自身の思いや考えだけの主張で市議会の議決を変えることはできません。
ただ、河村市長が「公開事業審査条例」を4項再議とした背景には、行政執行に関わる条例を市長との事前協議なく提案、議決したとの不満があるようで、先般の申入れで河村市長は、
「協議の申入れの際に、正副議長より、議員提案条例3件を"公布するか、再議するか"の判断をするよう言われ、1週間の検討期間を頂き、私としては、4項再議は義務規定で、大変重いものと認識しており、条例の中身等について、議会の皆さんと今一度確認・協議を行った上で、慎重に判断したいと考えいたが、協議を経ずして結論を出すことは不本意」
「本市の事務の管理執行の責任者として、このような条例を公布するわけにいかず、再議に付することを決断した。」
「市長の権限に影響を及ぼす恐れのある条例案に関するルールづくりが必要であると認識していて、早急に協議を行っていただきたい。」と重ねての協議の申し入れをしています。
昨年4月の河村市長の登場で、名古屋市議会では確かに積極的な政策議論が行われるようにもなり、従来に増して議会内の議論が活性化したのは事実で、それまでの市議会には見られなかった政策条例提案や議員間討論などが頻繁に行われるようにもなり、河村市長就任後の市議会では、議員提案による条例案が8件提案され、継続審査中の1件を除けば5件が可決し、その内4件の議員提案条例が交付されています。
こうした議員提案条例の審議は、2月定例会、6月定例会と2度の定例会で行われ、その手法も定例会ごとに改善されてきましたが、その手続きには、まだ検討しなければならない課題があるようにも思えます。
特に先の6月定例会で提案された議員提案条例5件の審議では、定例会中の提案から意思決定までの期間が2週間程度で、「地域委員会モデルの地域予算」「議員報酬の半減化条例」や今回4項再議とされている「中期戦略ビジョン」「公開事業審査条例」と重要且つ注目される議案が山積していた総務環境委員会では、夜遅くまでの審議や協議も行いましたが、時間的な制約に追われたことも事実でした。
現在の市議会では、年4回(臨時議会除く)の市議会定例会の中で、予算、決算の審議を行う2月、9月定例会と比べると6月、11月定例会の開会日数は2週間程度で、その間に条例案を議案として提案し、議会内での審議と併せて、市当局との検討、協議を行うことは時間的制約もあり、今後、河村市長の言う議員提案による条例のルールづくりも含めた制度的面の検討も必要と思います。
新聞等のマスコミ報道では、今回の市長と市議会のやり取りも対立の象徴として報道され、河村市長の議会解散戦略のひとつとの指摘も出されていますが、河村市長の戦略や思惑は、さておき、今回の騒動からも市議会が市民代表としての政策力を向上させる仕組み作りのきっかけがあるようにも思えます。
- 地方自治法第176条
普通地方公共団体の議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定があるものを除く外、その送付を受けた日から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。
2 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する。
3 前項の規定による議決については、出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。
4 普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない。
5 前項の規定による議会の議決又は選挙がなおその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、都道府県知事にあつては総務大臣、市町村長にあつては都道府県知事に対し、当該議決又は選挙があつた日から二十一日以内に、審査を申し立てることができる。
6 前項の規定による申立てがあつた場合において、総務大臣又は都道府県知事は、審査の結果、議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該議決又は選挙を取り消す旨の裁定をすることができる。
7 前項の裁定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあつた日から六十日以内に、裁判所に出訴することができる。
8 前項の訴えのうち第四項の規定による議会の議決又は選挙の取消しを求めるものは、当該議会を被告として提起しなければならない。


